本作は、身体表現と数学という行為、
そして数学によって生み出された
身体と生身の身体の関わりについて描いた
ダンス作品である。
アラン・チューリングは「脳」を数学を用いることによって
「身体」の外に対象化し、自分の「身体」の外に拡張することで、
もう一人の自分を作り出した。
他人から見ればもう一人の自分は身体とは切り離された存在だが、
チューリングにとってその身体は他者ではなく
身体そのものであり数学をすることで生み出された鏡である。
―真鍋大度
AI、機械学習を通じた、
未知のダンス表現への挑戦
パフォーミングアーツとしてのダンス表現を、インスタレーションやメディアアートの視点からのアプローチをとりこみ、未知なる斬新な発想と完成度の高さによって世界的に注目されてきたRhizomatiks ResearchとELEVENPLAY。その両者に、USのメディアアーティスト&リサーチャー、カイル・マクドナルドが加わり、彼らのコラボレーションから生み出された最新のダンスパフォーマンス作品が「discrete figures(ディスクリート フィギュアズ)」だ。
本作は、身体表現と数学を接近させ、数学によって分析的に生み出される身体像や所作の運動表現と生身の身体との関係性をドローンやAI、機械学習を通じて、新たに構築することによって、未知のダンス表現を作り出そうとする、真に挑戦的な新しい試みとなる。
ここでは、近年Rhizomatiks Researchが取り組んできたメディアテクノロジーを進化させた先鋭な表現の洗練に加え、先端的な演出技術への挑戦として、最新の機械学習の研究成果を公演毎に取り込みソフトウェアを更新し、全く新しい知的なコレオグラフィーによる身体表現を可能にする。
ダンスを、従来のように一個人の演出家の主観性によるものから捉えるのでなく、AI、機械学習による組織化を通じて身体像と運動を捉え直し、その数値データと分析結果をダンス表現とコレオグラフに導入する方法をとる。
またステージは、インタラクティブインスタレーションとしての空間構造も意識されている。様々なルール、アルゴリズムの元でステージ上の複数のオブジェクトが、ダンサーによる身体表現に対応した動きを構成する。「discrete figures」は、これまでにまったく実現されていない数学的・集合知的な方法からの未知の身体性を探求するステージである。
discrete figures
at Spiral Hall Tokyo